郡山の質屋からおトク情報発信中 「質屋情報」記事一覧

知っているようで知らない「質屋」の話 vol.15

2020年03月11日

開拓時代のアメリカで
仕事中にハイボール!?

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ハイボールのネーミングの由来について、イギリス発祥説に続き、アメリカで生まれたエピソードを紹介します。

19世紀の開拓時代の南部アメリカで、物流を支えていたのは鉄道でした。この頃、鉄道の信号には「ボール信号」が使われていたそうです。長い棒の先にボールを取り付け、そのボールを上下させることで運転士に「進行」「停止」を伝える仕組みです。ボールが高い位置(=ハイ・ボール)にあれば青、つまり「進行せよ」。低い位置にあれば赤、「停止せよ」という意味ですね。のんびりとした開拓時代、鉄道会社の駅員はバーボンウイスキーを飲みながら仕事をしていたそうです。しかし、信号がハイ・ボールの状態になると、ちびちび飲んでもいられません。なぜなら、間もなく列車が入って来るからです。駅員は飲み残しのバーボンにソーダ水を入れて一気に流し込んだとか。そのため、バーボンのソーダ割を「ハイボール」と呼ぶようになったと伝わっています。

イギリス発祥説とアメリカ発祥説、ともに不確かなエピソードとされていますが、なかなかおもしろいと思いませんか。これからバーに出掛けて、ハイボールを一杯やるよという方、お友だちにこの話を披露してみてはいかがでしょうか。




ウイスキーの原酒不足

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こちらのコラムでは、日本産ウイスキーが誕生から100年に満たないにも関わらず、「響」、「白州」、「山崎」といった人気銘柄の価格が高騰している理由をお伝えしてきました。続いて、価格高騰4つめの理由「原酒の不足」についてお話ししたいと思います。

日本のウイスキーは、長らく売り上げ低迷の時期がありました。メーカーとしては、売れないウイスキーの製造や設備投資を控えるのも当然です。しかし、ハイボールのCMや世界的コンテストでの入賞を機に、需要が急激に伸び始めました。そのためにウイスキーの需給バランスが崩れ、原酒不足に陥ってしまったのです。その影響で、人気の銘柄のいくつかが休売を余儀なくされました。一例として、サントリーは2018年6月に「白州12年」、同年9月頃より「響17年」を休売し、現在に至ります。「白州12年」の場合、熟成させるためには12年以上の年月を必要とするそうです。作りたくても作れないというのが現状です。発売が再開されるには、まだしばらくかかりそうですね。(続く)

<参考文献>
『はじめてのひとり飲み バーとウイスキーの素敵バイブル』(倉島英昭、藤井達郎監修/株式会社三栄書房/2019年2月3日発行)
『ウイスキー その魅力と知識を味わう芳醇本』(博学こだわり倶楽部[編]/河出書房新社・中/2015年3月1日初版発行)
ほか、ウイスキーメーカーのWEBサイトを参考にさせていただきました。

知っているようで知らない「質屋」の話 vol.14

2019年10月02日

ハイボールのCM効果

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2009年に放映されたサントリー「ハイボール」のテレビCM は、長く低迷していたウイスキー消費を大きく動かすきっかけの一つとなりました。

10年も続くシリーズCMで、定番ソング「ウイスキーがお好きでしょ」が流れると、「あ、ハイボールのCMだ」と反応される方も多いのではないでしょうか。舞台は、マンションの一室にも隠れ家風の店にも見えます。そして、目の前でハイボールを作ってくれるのは、初代が小雪さん、2代目は菅野美穂さん、現在は3代目の井川遥さん。カジュアルすぎず、ラグジュアリーすぎない雰囲気の中で交わされる小粋な会話。なんだか、「行ってみたいな」と思わせる空間ですし、ハイボールが、ウイスキー、ソーダ、レモンで作られる飲み物であることも理解できます。

ちなみに、CMはサントリー「角瓶」を宣伝するものです。角瓶は、1500円前後のお求めやすい銘柄です。ハイボールのCMが、ウイスキーのハードルを下げる役割を果たしたといえるでしょう。




ハイボールの名前の由来

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念のためにお伝えしておくと、ハイボールはCMのために作られた飲み方ではなく、以前から飲まれていたカクテルの一種です。ウイスキーに限らず、炭酸水で割ったお酒を「ハイボール」と呼ぶことがありますが、やはりハイボールと聞いて真っ先にイメージするのはウイスキーで作ったものだと思います。ご自宅に、ウイスキー、炭酸水、レモン、氷があれば、簡単に手作りすることができます。宅飲みのレパートリーが増えそうですね。缶のハイボールを買えば、もっと手軽です。例えば、出張帰りの新幹線で、ナッツなどのおつまみと一緒に缶入りハイボールを飲んで疲れを癒すのもいいですね。ハイボールは、お店でも提供されています。「余市」「竹鶴」「山崎」といった高級なウイスキーを使ったハイボールの味わいは、また格別ですよ。

ところで、「ハイボール」というネーミングの由来をご存知ですか?ネットや本で調べたところ、19世紀ごろにイギリス、あるいはアメリカで生まれた名前のようです。諸説ある中から、いくつかご紹介したいと思います。

まずは、イギリス発祥説を2つ。ひとつめは、ハイボールの「泡」が名前の由来となったお話しです。ウイスキーを炭酸水で割ると、下から上、つまり高い方へと泡が上がっていきますね。小さな丸い泡をボールに見立て、「high(高い)ball(ボール)」と呼ぶようになったそうです。イギリス発祥説2つめ、舞台はゴルフ場です。ゴルフを楽しんでいた男が自分の打順が回ってきたときに、のどを潤そうと近くにあったウイスキーのソーダ割をゴクゴクと飲んだそうです。「なんておいしんだ」――その男の元に、他のプレイヤーが高く(high)打ち上げたゴルフボール(ball)が飛んできました。そのため、男が飲んでいたお酒が「ハイボール」と呼ばれるようになったということです。アメリカ発祥説は、次回のコラムでご紹介します。(続く)

<参考文献>
『はじめてのひとり飲み バーとウイスキーの素敵バイブル』(倉島英昭、藤井達郎監修/株式会社三栄書房/2019年2月3日発行)
『ウイスキー その魅力と知識を味わう芳醇本』(博学こだわり倶楽部[編]/河出書房新社・中/2015年3月1日初版発行)
ほか、ウイスキーメーカーのWEBサイトを参考にさせていただきました。

知っているようで知らない「質屋」の話 vol.13

2019年09月03日

日本のウイスキーメーカーといえば

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一部の銘柄で、長く高値取引が続いているジャパニーズ・ウイスキー。価格高騰の4つの理由の3つ目、「ウイスキー製造会社による新しい飲み方の提案」についてお話ししたいと思います。ヒントはサントリーです。

日本のウイスキー製造会社の2トップを尋ねられたら、「ニッカウヰスキー」と「サントリー」と答える人が大半だと思います。世界的コンテストの常連である「竹鶴」はニッカウヰスキー、「白州」「響」「山崎」はサントリーの銘柄です。あまり知られていませんが、キリンディティラリー、宝酒造などでもウイスキーが作られています。

歴史的に見ると、ジャパニーズ・ウイスキーの元祖はニッカウヰスキーです。設立時の社名を「大日本果汁株式会社」といい、現在はアサヒグループの一社としてウイスキーを作り続けています。社名に「ウヰスキー」とつくだけあって、取扱商品のほとんどがウイスキーです。ウイスキー以外では、少ないながらもカフェジン、カフェウォッカを作っています。それぞれ、「カフェ式連続蒸留機」を使用するジンとウォッカのため、このような名前がついています。

サントリーは、言わずと知れた飲料メーカーの大手です。ビール、ワイン、焼酎といったお酒のほか、果汁飲料やお茶など、ソフトドリンクも幅広く手掛けています。




10年前に比べて増えた?減った?
ウイスキーの消費量

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私がお酒に関するコラムを書くようになってしばらく経ちますが、お酒についていろいろ調べているうちに、おもしろいデータを見つけました。その名も「酒のしおり」。このデータをどこが作っているかは、後日お話ししたいと思います。

酒のしおりに掲載の「酒類販売(消費)数量の推移表」によると、2016(平成28)年、ウイスキーの年間消費量は年間145,197キロリットル、成人1人当たりの消費量に換算すると1.4リットルだそうです。ウイスキーは1瓶が700mlのものが多いので、1人がおよそ2本を消費している計算ですね。この数字、10年前はどうだったのでしょう。2006(平成18)年は、年間消費量が79,639キロリットル、成人1人当たり0.8リットル。10年間で約1.8倍ものウイスキーが飲まれるようになったことがわかります。

ウイスキーと日本の大人たちにいったい何があったのでしょうか。その理由のひとつとして、サントリー「角ハイボール」のCMがウイスキーの消費量アップに大きく影響したといわれています。出演者は女優の小雪さんで、2009年から放映が始まりました。(続く)

知っているようで知らない「質屋」の話 vol.12

2019年07月03日

SNSで人気が拡散
注目度と価格は正比例

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響や白州に代表される国産ウイスキーの価格高騰の背景にある4つの理由、2つめは「メディアによる報道と情報の拡散」です。前回のコラムでご紹介した「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」の2019年の結果が発表されましたね。今年も、「竹鶴ピュアモルト25年」をはじめとするジャパニーズウイスキーが華々しい成績をおさめました。ISCは、はるか遠くイギリスで開催されるお酒のコンテストですが、結果はネットニュースでたちまち世界中を駆け巡りました。

近年はSNSが普及したこともあり、誰もが気軽に情報を受信・共有・発信できる時代です。長年ブログを書いている知り合いのライターさんが、「食べ物・飲み物」「旅先の風景」「見た映画」「動物」等のさまざまなテーマの中で、読み手の共感を得やすいのはダントツで「食べ物・飲み物」の記事だと言っていました。ウイスキー好きの方、酒屋、バーの経営者さんなら、世界的なお酒のコンテストのニュースをキャッチするアンテナを常に張っているでしょうし、目にした記事をツイッターやFacebookにアップせずにはいられないはずです。情報はネットに乗ってすさまじいスピードで拡散され、「コンテストで1位になったウイスキーを自分も飲んでみたい!」という気持ちが高まります。特定の銘柄に人気が集中し、それが価格高騰につながっているのです。




こんなに違う!
ウイスキーとビール

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国産ウイスキーの価格高騰の3つめの理由は、「ウイスキー製造会社による新しい飲み方の提案」です。詳しくご説明する前に質問です。あなたが20歳になって初めて飲んだお酒は何ですか?おそらく、ビールやチューハイがという人が多いのではないでしょうか。これらのお酒のアルコール度数は5%~9%が大半で、缶や瓶を開けたら「そのまま飲める」気軽さが特徴です。対して、ウイスキーのアルコール度数は40%~43%と高め。それだけでアルコールが苦手な方には敬遠されがちですし、いざ飲もうとすると水割り、ロック、ソーダ割など「飲むためのひと手間」が必要です。

さらに、飲むシーンにも大きな違いがあります。ビールであれば自宅でテレビを見ながら、あるいは風呂上がりにプシュッと開けてゴクゴク。バーベキューや海水浴といったアウトドア、夏祭り、プロ野球観戦で飲むビールが最高という人もいますね。居酒屋に集まれば、とりあえずビール。みんなで乾杯するならビールを選ぶ人が多数です。一方、ウイスキーを飲むシーンはビールに比べて限られています。例えば、スナックやクラブでホステスさんが作ってくれる水割り、バーカウンターで飲むロック。場所は屋内で時間帯は遅め、アルコールに比較的強い人で性別は男性、それも少し年齢を重ねた人が嗜むイメージがありますね。現に、ウイスキーの売上が長く低迷していた時期もありました。(続く)

知っているようで知らない「質屋」の話 vol.11

2019年03月31日

日本産ウイスキーは
1929年に誕生

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前回のコラムでは、お酒は大きく分けて「醸造酒」と「蒸留酒」があること、ウイスキーは醸造酒を蒸留して作る「蒸留酒」のひとつであり、誕生したのは16世紀のアイルランド、もしくはスコットランドである、というお話をしました。

さて、長らく鎖国していた日本にウイスキーが初めて持ち込まれたのは、幕末の頃と伝えられています。日本産ウイスキーが初めてつくられたのは、1929年です。この偉業を成し遂げたのは、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝であるのは有名な話。彼と妻であるスコットランド人女性のリタによる物語は、2014年9月から放送されたNHKの朝ドラ「マッサン」でも詳しく描かれました。

誕生から100年に満たない日本産ウイスキーですが、2017年に起こった価格高騰の背景にはいったい何があったのでしょうか。価格高騰の理由は、大きく4つ挙げられます。1つめに世界的コンテストでの受賞、2つめにメディアによる報道と情報の拡散、3つめにウイスキー製造会社による新しい飲み方の提案、4つめに原酒の不足です。




世界的コンテストに受賞!
日本産ウイスキーの実力

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日本産ウイスキーの世界的コンテストでの実績は錚々たるものです。特に有名なコンテストといえば、「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」。これはイギリスの酒類専門出版社「ドリンクス・インターナショナル」主催の国際的なスピリッツ(蒸溜酒)の品評会で、ウイスキーのほか、ブランデー、ラム、ホワイトスピリッツ、リキュールの5部門に分かれています。同じくイギリスの「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」は、ウイスキー専門誌「ウイスキー・マガジン」主催、「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション(SWSC)」はアメリカで開催される世界的な酒類コンペティションです。

これらのコンテストに日本産ウイスキーも出品され、毎年のように好成績をおさめています。例として、2016年のISCでは、サントリーの「響21年」がトロフィー、「響17年」、「白州25年」、「白州18年」、ニッカの「竹鶴ピュアモルト」が金賞を受賞。同年のWWAでは、サントリーの「響21年」がワールドベストブレンデッドウイスキーを受賞しました。翌2017年のISCでは、サントリーの「響21年」が最高賞にあたる「シュプリーム チャンピオン スピリット」に輝き、「白州25年」「白州18年」ほかと、ニッカの「竹鶴25年ピュアモルト」が金賞を受賞しました。同年のWWAでは、サントリーの「響21年」がワールドベストブレンデッドウイスキーを受賞しています。

これらの受賞は一部にすぎず、サントリー「山崎」の12年、18年、25年や、ニッカ「竹鶴」17年、21年なども受賞の常連として名を連ねています。2018年も日本産ウイスキーが大いに健闘したことから、価格高騰はしばらく継続するものと思われます。(続く)